本記事では、2024年5月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
目次
2024年5月27日~5月31日
①(月)レンジ相場
- 英国・米国が休場&要人発言
- ドル円の値幅は156円中〜156円後半の小さいレンジ(29pips程度)
- レーンECB専務理事:ECBは利下げを開始する準備が整っている
- ビルロワドガロー氏:6月の利下げ(ECB)はサプライズがない限り決定事項
②(火)ポンド高
- 対円で16年ぶりの高値
- 1ポンド200.650円まで上昇
- 他の中央銀行よりも長く金利据え置きを続けるとの見方
③(火)ドル高
- 経済指標&米国債入札
- 消費者信頼感指数:予想95.9 結果102.0(前回97.0→97.5)
- 米2・5年債入札:低調な入札結果を受けて米両機金利が上昇
④(水)円高
- 安達日銀審議委員
- 当面は緩和的な金融環境が継続
- 国債買い入れは段階的に減額していくことが望ましい
- 下振れリスク配慮しすぎると、急激な引き締めを余儀なくされる
- ドル円は156.898円まで失速
⑤(水)ドル高
- 米国債入札
- 米7年債入札:低調な入札結果を受けて米両機金利が上昇
- ドル円は157.700円まで上昇
⑥(木)円高
- 日経平均下落&月末フロー
- 日経平均一時940円近い下落
- ドル円・クロス円大幅に下落
- ドル円は1円、ポンド円は1.47円
⑦(木)ドル安
- 経済指標
- 第1四半期GDP:予想+1.3% 結果+1.3%(前回+1.6%)
- 個人消費:予想+2.2% 結果+2.0%(前回+2.5%)
- 米新規失業保険申請件数:予想21.8万件 結果21.9万件
- GDPにて1-3月は下方修正&個人消費の伸びが鈍化
- ドル円は156.374円まで下落
⑧(金)ユーロ高
- 経済指標
- HICP(前年比):予想+2.5% 結果+2.6%(前回+2.4%)
- HICP(コア・前年比):予想+2.7% 結果+2.9%(前回+2.7%)
- 経済指標が強い結果となりユーロ続伸
- 米PCEの結果により対ドルで上昇
- ロンドンフィキシングがドル高で動いた為失速
⑨(金)ドル安
- 経済指標
- 個人所得:予想0.3% 結果0.3%(前回0.5%)
- 個人支出:予想0.3% 結果0.2%(前回0.8%)
- PCEデフレーター(前月比):予想0.4% 結果0.3%(前回0.3%)
- PCEデフレーター(前年比):予想2.7% 結果2.7%(前回2.7%)
- PCEコア・デフレーター(前月比):予想0.3% 結果0.2%(前回0.3%)
- PCEコア・デフレーター(前年比):予想2.8% 結果2.8%(前回2.8%)
- 数字が若干減少
⑩(金)ドル高
- 月末フロー
- ロンドンフィキシング1時間前からドル高で反応
- 月末の資金入れ替え
月末のフローが影響する動き難い展開・直近高値付近のレンジ相場でした。
1週間通して動いたドル円の値幅は1.34円(134pips)となり、値幅も限定的でした。
今回のメイントピックスである、「ECB(欧州中央銀行)の動向」についてまとめます。
ECB(欧州中央銀行)の動向
(現在)主要5カ国(米・欧・英・日・豪)の中で、「利下げ」が最も早いと言われているのがECB(欧州中央銀行)です。
ECB政策金利
主要5カ国の中では、金利の高さは3番目です。
またECB関係者の発言が相次いだのでまとめていきます。
【レーンECB専務理事】
- 欧州中央銀行(ECB)は利下げを開始する準備が整っている
- 2024年の残りの期間にインフレ率がスムーズに低下しなかったとしても、2025年の間にさらなるディスインフレが予想される
- 欧州中央銀行(ECB)の賃金トラッカーは、全体的な賃金圧力が2023年以降緩やかになっていることを示している
(ブルームバーグ)
ECB利上げの影響、まだ完全には表れていない-レーン理事
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-27/SE5974T0AFB400
【ビルロワドガロー仏中銀総裁】
- ECBは7月の追加利下げを排除すべきではない
- サプライズがなければ、6月の利下げは『決定事項』
- 賃金やマージンよりもサービス・インフレの方が重要
(ブルームバーグ)
仏中銀総裁、ECBは7月の利下げを排除すべきではない-報道
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-27/SE58ACT0G1KW00
【ホルツマン・オーストリア中銀総裁】
- 来週の会合での利下げを支持
- 今年は2回、最大3回の利下げを予想
【クノット・オランダ中銀総裁】
- 段階的に金利を引き下げることが可能
- 政策金利はゆっくりと、しかし徐々に、より緩和的な水準へと移行するだろう
- 3月の予測に基づくと、最適な政策は今年3-4回の利下げ
- 特定の将来の金利パスに関するコミットメントは避けるべき
6月のECB政策金利発表で、「利下げ」をすることがほぼ既定路線となっています。
タカ派である独連銀総裁・クノット氏も、ECBの政策金利が次回会合(6月6日)で利下げになるのは既定路線とのこと。
クノット氏は、「最適な金融政策は今年3~4回の利下げ」となります。
- 6月6日(既定路線)
- 7月18日
- 9月12日
- 10月17日
- 12月12日
※6月を含めて、今年は残り5回の会合があります。
2ヶ月連続(6~7月)の「利下げ」は様子を見るかもしれませんが、データが落ち着いている限り、連続利下げの可能性があると言うことになります。
「主要国で初めての利下げになるのか?」が、6月6日の会合で注目されています。
まとめ
今回は先週の振り返りとして、「ECB(欧州中央銀行)の動向」についてまとめさせていただきました。
上半期最後の1ヶ月がスタートするわけですが、1週目から米国の重要な経済指標だったり、注目されているECB政策金利発表が控えています。
しっかり日々の分析は怠らないように共有していきたいと思います。
今週もよろしくお願いします。
2024年5月20日~5月24日
①(月)ドル高
- 米要人発言(タカ派)
- インフレは低下しているが、利下げまでのデータに至っていない
- 今年のこれまでのデータはでこぼこだった
- 米金利上昇でドル円156.300円付近まで上昇
②(月)米株価高
- 3指数史上最高値更新
- NVIDIA決算が良いと予想
- インフレ鈍化も理由
③(火)豪ドル安
- RBA議事録公表
- インフレリスクの上昇を考えて利上げも検討
- 過度な微調整を避け一旦は据え置き
④(火)カナダドル安
- 経済指標
- CPI(前月比):予想+0.6% 結果+0.5%(前回+0.6%)
- CPI(前年比):予想+2.7%結果+2.7%(前回+2.9%)
- 3年1ヶ月ぶりぐらいの低水準
⑤(水)ニュージーランドドル高
- 政策金利
- 結果:据え置き(550bp)
- 今回の会合で金利の引き上げを真剣に検討
⑥(水)ポンド高
- 経済指標
- 英CPI前月比:予想+0.2% 結果+0.3%(前回+0.6%)
- 英CPI前年比:予想+2.1%結果+2.3%(前回+3.2%)
- 英CPIコア・前年比:予想+3.6%結果+3.9%(前回+4.2%)
- 英PPI前月比:予想+0.4% 結果+0.2%(前回+0.2%)
- 英PPI前年比:予想+1.1%結果+1.1%(前回+0.6%→+0.7%)
- 英小売物価指数(前月比):予想+0.5% 結果+0.5%(前回+0.5%)
- 英小売物価指数(前月比):予想+3.3%結果+3.3%(前回+4.3%)
- 英小売物価指数(コア・前月比):予想–%結果+2.3%(前回+3.3%)
⑦(水)米株高
- NVIDIAの決算
- 売上高・利益とも予想上回る
- 5-7月見通しも市場予想上回る
- 株式分割 & 増配
- NVIDIAは株価6%上昇
⑧(木)ユーロ高
- 経済指標
- 仏製造業:予想45.8 結果46.7(前回45.3)
- 仏サービス業:予想51.7 結果49.4(前回51.3)
- 独製造業:製造業:予想43.1 結果45.4(前回42.5)
- 独サービス業:予想53.5 結果53.9(前回53.2)
- 欧製造業:予想46.2 結果47.4(前回45.7)
- 欧サービス業:予想53.5 結果53.3(前回53.3)
- 経済が回復してきている
⑨(木)ドル高
- 経済指標
- 米製造業:予想50.0 結果50.9(前回50.0)
- 米サービス業:予想51.3 結果54.8(前回51.3)
- 22年4月以来の高水準
- 直近高値更新(157.184円)
⑩(金)ドル安
- 経済指標
- ミシガン大学消費者信頼感指数【確報値】:予想67.5 結果69.1(前回67.4)
- 1年先期待インフレ率:予想3.4% 結果3.3%(前回3.5%)
- 5-10年期待インフレ率:予想3.1% 結果3.0%(前回3.1%)
- 耐久財受注:予想-0.8% 結果0.7%(前回+2.6%)
- 除輸送用機器:予想+0.1% 結果0.4%(前回+0.2%)
⑪(金)ユーロ高
- 要人発言
- ナーゲル独連銀総裁:ECB追加利下げ、9月まで待つ必要がある
- 6月の可能性はある
先週の為替市場は、先々週の高値(156.785円付近)を更新し、ジリ高となったドル円。
1週間通して動いたドル円の値幅は1.69円(169pips)となり、ドルの強さが堅調だった1週間でした。
では先週のおさらいになりますが、「RBNZ政策金利」「FOMC議事要旨&要人発言」についてまとめていきたいと思います。
RBNZ政策金利
【まとめ】
- 結果:据え置き(550bp)
- 政策金利見通し、ピークは2024年12月末の5.65%(前回2月時は2024年9月末の+5.60%)
- 現在の政策金利を下回るのは、2025年9月以降(前回2月時は2025年3月以降)
- 国内のインフレ率低下には時間かかる見込み
- 今回の会合で金利の引き上げを真剣に検討
(ブルームバーグ)
NZ中銀、政策金利7会合連続据え置き-25年後半利下げ開始予想
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-22/SDV70ET1UM0W00
上記の結果により、ニュージーランドドルは大きく上昇することになります。
声明文で、
- 金利ピーク予想を引き上げ
- 利下げ時期が大きく後退
などが要因です。
世界各国の多くでインフレを抑えきれない状況が続いており、高い金利水準を維持しないといけない状況であることに変わりはなさそうです。
(現在)7会合連続で据え置きを実施していますが、まだまだ利下げ時期に到達するためには厳しい道のりというわけですね。
ニュージーランドドルの政策金利は、550bpと主要他国の政策金利の中では米国と同一の水準となります。
政策金利が高い状態ですが、インフレ率が高止まりする状況を考えると、かなりインフレが根強い事がわかりますね。
FOMC議事要旨&要人発言
FOMC議事要旨と米国の要人発言がありました。
【FOMC議事要旨】
- 数人の当局者は必要ならさらなる引き締めに意欲
- 一部の当局者は高金利の影響は以前よりも小さいと認識
- 一部の当局者は金融状況が十分に制限的ではないと懸念
- インフレ率は3月よりも緩やかに低下していると見ている
- 一部の当局者は長期金利がこれまで考えられていたよりも高くなる可能性があると認識
- 当局者らは依然として金融政策は制限的だと考えているが、程度については不確実と認識
- 当局者らは第1四半期のインフレ率に失望
- 当局者らはインフレが下がらなければ金利を長期間維持することを議論
- インフレ巡る確信の高まりは予想よりも長期化すると認識」
- 当局者の多くは景気抑制の度合いに確信持たず
(ブルームバーグ)
FOMC議事要旨、より長期に高水準での政策金利維持が望ましい
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-22/SDWFDLDWRGG000
あまり変わり映えは無いですが、基本的には「ハイアー&ロンガー」です。
『高い金利水準を長く続ける』という意味になりますが、直近のFRB関係者の発言内容は「タカ派」が続いている状況です。
【ボスティック米アトランタ連銀総裁】
- インフレ目標の2%に到達すると確信できるまで、まだ時間がかかる
- 企業の価格決定力は弱まりつつある
- 今年のこれまでのデータはでこぼこだった
- 我々の現状の金融政策は抑制的
- 第4四半期前の利下げはないだろう
【バーFRB副議長】
- 第1四半期のインフレには失望、金融緩和に必要な確信をもたらさなかった
- インフレと雇用の責務の両方に対するリスクに警戒
- 以前に考えられていたよりも長期間、引き締めを維持する必要がある
- インフレ対策において、FRBはまだ仕事を終えていない
- 全体として米国経済は非常に強い
【ジェファーソンFRB副議長】
- 政策金利は制限的な領域にある
- 今年後半には個人消費の伸びが鈍化すると予想
- ディスインフレの進展鈍化が長期にわたるかどうかを判断するには時期尚早
- 4月のインフレ指標が改善したことは心強い
- インフレは依然としてしぶとい
【デイリー米サンフランシスコ連銀総裁】
- インフレ率が2%に向けて低下していることをまだ確信せず
- インフレは改善すると予想されるが、急速ではない
【メスター米クリーブランド連銀総裁】
- 金融政策は制限的
- 4月CPIは良いニュースだったが、インフレがどのような方向に向かうかを判断するには時期尚早
- インフレ率が持続的に2%に向かうかどうかを判断するには、インフレに関するより多くの証拠を集める必要
【ウォラーFRB理事】
- 利下げには良好なインフレがあと数カ月必要
- 追加利上げは恐らく不要だろう
- 赤字支出が金利上昇に影響を及ぼし始めるか、それが懸念事項
- インフレが目標に向かって低下していることを本当に確認する必要がある
- 利下げはデータ次第
FRBメンバーは、皆、同じような事を述べています。
インフレ低下の兆候が見られるが、利下げするまでのデータに至っていないということ。
引き続き「ハイアー&ロンガー」を維持しそうな感じですね。
しかしタカ派のウォラーFRB理事の「追加利上げは恐らく不要だろう」という発言に対して、やや金利低下のドル安に動いた局面がありましたが、下落も限定的でした。
FedWatchの推移以下です。
9月の利下げがメインシナリオでしたが、予想値が変わってきている状況です。
現在(525-550)のラインですが、11月から(500-525)へ青カーソルが移動しています。
つまり年内は1回の利下げ予想に傾いてきている状況というわけです。
もちろんデータ次第になりますが、今後の経済指標で予想値は変動しますので、引き続き情報を取っていきます。
まとめ
特に大きな材料はありませんでしたが、米国の要人発言内容を確認する限りでは、まだ高い金利水準が続きそうなので米ドルは底堅かった印象です。
わずかな変化が大きな転換のキッカケになりそうな気配も感じますので、日々の分析・マクロの視点で情報を繋げていきます。
今週もよろしくお願いします。
2024年5月13日~5月17日
①(月)円高
- 日銀債券買い入れオペの減額
- 4750億円から4259億円に減額
- 国債買い入れ減額=債券価格が下落=利回りが上昇
- 日本円が上昇
②(月)ドル高
- イエレン財務長官発言&NY連銀消費者調査
- 為替介入はまれな行為であるべき、他国への伝達必要
- 1年先インフレ期待:結果3.3%(前回3.0%)
- 3年先インフレ期待:結果2.8%(前回2.9%)
- 5年先インフレ期待:結果2.8%(前回2.6%)
- 介入できないのでは?&期待インフレが上昇
- 意識されていた156円を突破
③(火)ポンド安
- 経済指標&要人発言
- ILO失業率:予想4.3% 結果4.3%(前回4.2%)
- 失業率:予想–% 結果4.1%(前回4.0%→4.1%)
- 失業保険申請件数:予想– 結果+0.89万件
- ピル氏「利下げ」についての言及「利下げは夏に検討される公算大」
④(火)ドル高→ドル安
- 経済指標
- PPI(前月比):予想+0.3% 結果+0.5%(前回+0.2%→-0.1%)
- PPI(前年比):予想+2.2%結果+2.2%(前回+2.1%→+1.8%)
- PPI(前月比・コア):予想+0.2% 結果+0.5%(前回+0.2%→-0.1%)
- PPI(前年比・コア):予想+2.3% 結果+2.4%(前回+2.4%→+2.1%)
- 経済指標は予想を上回る強い数字:ドル高へ
- 前回の結果が大幅な下方修正へ:ドル安へ
- 金利低下の米株高
⑤(水)ドル安
- CPIの決済売り
- CPI発表までの決済売りが出た
- ドル円は1円以上の下落
⑥(水)ドル安
- 経済指標
- 米CPI前月比:予想+0.4% 結果+0.3%(前回+0.4%)
- 米CPI前年比:予想+3.4%結果+3.4%(前回+3.5%)
- 米CPI前月比・コア:予想+0.3% 結果+0.3%(前回+0.4%)
- 米CPI前年比・コア:予想+3.6% 結果+3.6%(前回+3.8%)
- 米CPIスーパーコア(前年比):結果4.884%(前回4.774%)
- 小売売上高(前月比):予想+0.4% 結果±0.0%(前回+0.7%→+0.6%)
- 小売売上高(前月比・コア):予想+0.2% 結果+0.2%(前回+1.1%→+0.9%)
- NY連銀製造業景気指数:予想-10.0 結果-15.6(前回-14.3)
- 全て予想を下回りドル円は154.695円まで下落
⑦(木)ドル安
- 前日の結果を引き継ぐ
- 前日の米経済指標の結果を引き継ぎ一時ストップ売り
- ドル円は153.603円付近まで下落
⑧(木)ドル高
- ショートカバー&経済指標&要人発言
- ストップ安をつけたがショートカバーが入る」
- NY時間の「輸入物価指数」で強い数字」
- 上記経済指標にてインフレ懸念が浮上」
- 要人発言で全員「タカ派」
⑨(金)ドル安
- 経済指標
- 米景気先行指数:予想-0.2% 結果-0.6%(前回-0.3%)
- 長期金利が低下で155.244円まで下落
当該週の為替市場は、注目されていた「米経済指標」の影響でドル円は乱高下することになりました。
週半ばからドル円は下落し始め、金曜日の引けまでに上昇してくる動きとなります。
ドル円の週間値幅は3.18円(318pips)となり、米経済指標の弱さが目立った1週間でした。
今回のメイントピックスである、ドル円の「水曜日の下落要因」「木曜日の上昇要因」についてまとめます。
米経済指標(水曜日の下落要因)
先週は水曜日の経済指標の結果により、大きくドル売りで反応しました。
マーケットが注目していた米CPI(消費者物価指数)ですが、予想通りインフレが鈍化している結果となり、同時刻発表の小売売上高やニューヨーク連銀の発表も大幅な低下となり、今回のドル安の要因となりました。
▼米CPI(消費者物価指数)
【結果】
- 前月比:予想+0.4% 結果+0.3%(前回+0.4%)
- 前年比:予想+3.4%結果+3.4%(前回+3.5%)
- 前月比・コア:予想+0.3% 結果+0.3%(前回+0.4%)
- 前年比・コア:予想+3.6% 結果+3.6%(前回+3.8%)
- スーパーコア(前年比):結果4.884%(前回4.774%)
(ブルームバーグ)
米CPIコア指数、6カ月ぶりに伸び鈍化-年内利下げへの一歩
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-15/SDJ1FOT1UM0W00
数字が鈍化していることがわかります。
内訳より、ガソリンや家賃などがそこまで落ちきっていないので、大幅に下落する材料ではありません。
そしてスーパーコア(コア・サービス除く住居)はむしろ上昇しています。
*2024年4月時点のデータ
注目されている緑グラフ(スーパーコア)は、今回さらに上昇してきています。
このスーパーコアの影響でドルの大きな買い戻しが入るも、以下の経済指標の影響が強かったのかドルは再度引け間際まで売られる形になります。
▼小売売上高&【除自動車】&NY連銀製造業景気指数
【小売売上高:結果】
- 前月比:予想+0.4% 結果±0.0%(前回+0.7%→+0.6%)
- 前月比・コア:予想+0.2% 結果+0.2%(前回+1.1%→+0.9%)
(ブルームバーグ)
4月の米小売売上高は横ばい、予想下回る-過去2カ月は下方修正
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-15/SDJ1PMT0AFB400
【NY連銀製造業景気指数:結果】
- 予想-10.0 結果-15.6(前回-14.3)
小売売上高の結果より、前回分は下方修正となり、今回も予想を大幅に下回る弱い数字だったので、かなり弱かったことがわかります。
そしてNY連銀製造業も数字が弱く、全体的に今回の経済指標は弱い結果となってしまいました。
上記2つの経済指標の影響も大きく、米長期金利が大幅に低下し、水曜日はドル売りに拍車がかかりました。
米経済指標(木曜日の上昇要因)
木曜日の経済指標の結果により、大きくドル買いで反応しました。
前日のショートカバーが入った要因もありましたが、主に経済指標と要人発言(タカ派)にて大きく長期金利が上昇して、ドルの買い戻しが入った流れとなります。
▼輸入物価指数
【結果】
- 前月比:予想+0.3% 結果+0.9%(前回+0.4%→+0.6%)
- 前年比:予想+0.4% 結果+1.1%(前回+0.4%)
大幅に強い結果となり、米長短期金利が上昇=ドル円は上昇することになります。
今回の輸入物価指数にて米長短期金利が上昇する理由は、直近までの前月比マイナスがプラスに転じ始めた事です。
輸入物価とは、輸入品が入着する段階の価格を調査した物価指数のことです。
インフレの観点より、『到着した商品価格が上昇=再度インフレが上昇するのではないか?』という懸念点が出てくるので、「高い金利がまだ続きそうだ」という解釈になり、『長短期金利が上昇=ドル円が上昇』したという流れになります。
この影響でドル円は、155.347円付近まで上昇し、要人発言などを受けて、155.533円付近の高値まで上昇することになりました。
まとめ
米経済指標は、5月初旬の雇用統計から弱い数字が続いています。
これまで米国経済は強いと認識されてきましたが、今回のように米経済指標の結果が連続して弱くなってくると、マーケットは少しずつ「米経済の弱さを考慮する必要がある。」という憶測に繋がります。
このわずかな変化から大きく転換するキッカケにもなりますので、日々の分析・情報共有をしていきます。
今週もよろしくお願いします。
2024年5月6日~5月10日
①(月)ドル高
- イエレン財務長官
- 比較的短期間にかなり動いた
- 為替介入についてはまれであるべきだ
- 今後日本勢は介入しづらくなるのではないか?
②(火)豪ドル安
- RBA政策金利
- 結果:据え置き(435bp)
- 一部噂があった「利上げ」に対して発言がなかった
- インフレの上振れリスクに対しては引き続き警戒
③(火)円高
- 経団連会長&日本政府の動き
- 経団連会長:いくらなんでも今の150円を超える円安は安すぎる
- 植田日銀総裁が岸田首相と為替を議論
- 対策を打つのではないか?というマーケットの思惑
④(火)ドル高
- 要人発言
- カシュカリ氏:金利を現行水準に「長期間」維持する方針
- 追加利上げに関して、「上げるハードルは高いが、可能性は排除しない」
⑤(水)円高
- 要人発言(植田日銀総裁)
- 物価見通しが上振れたら、金利をより早めに調整していくことが適当
- 瞬間的に円高方面に振れる
⑥(水)ドル高
- 要人発言&10年債の入札
- コリンズ氏:2%目標行くのは経済成長の減速が必要
- コリンズ氏:高金利を長い期間維持しないといけない
- 最高落札利回り:4.483%(WI:4.473%)
- 応札倍率:2.49倍(前回:2.34倍)
- 金利上昇からのドル買い
⑦(木)ポンド安
- BOE政策金利
- 据え置き(525bp)
- MPCは7対2で5.25%の据え置きを決定
- 2人が0.25%の利下げを主張
- 1人がラムズデン副総裁だった為、相場にインパクトが出た
- ベイリー氏:数カ月内に利下げが必要になる公算が大きい
⑧(木)ドル安
- 経済指標
- 米新規失業保険申請件数:予想21.5万件 結果23.1万件(前回20.8万件→20.9万件)
- 30年債権入札が好調=金利低下
- 労働市場が後退したことで長期金利が低下
- 長期金利が低下したことによる米株高
⑨(金)ポンド高
- 経済指標
- 英第1四半期GDP(前期比):予想+0.4% 結果+0.6%(前回-0.3%)
- 英第1四半期GDP(前年比):予想±0.0% 結果+0.2%(前回-0.2%)
- 英GDP:予想+0.1% 結果+0.4%(前回+0.1%→+0.2%)
- 英鉱工業生産(前月比):予想-0.4% 結果+0.2%(前回+1.0%)
- 英鉱工業生産(前年比):予想+0.3% 結果+0.5%(前回+1.0%)
- 英製造業生産高(前月比):予想-0.4% 結果+0.3%(前回+1.2%)
- 英製造業生産高(前年比):予想+1.7% 結果+2.3%(前回+2.6%)
⑩(金)ドル高
- ミシガン大米消費者信頼感指数
- 予想76.0 結果67.4 (前回77.2)
- 1年先インフレ率:予想3.2%結果3.5% (前回3.2%)
- 5年先インフレ率:予想3.0% 結果3.1%(前回3.0%)
- 信頼感指数は下回るが、期待インフレが強い結果
為替市場は、とくに動く材料がありませんでした。
しかしドル円は、為替介入で下落した50%の買い戻し(約310pips)が入った相場内容となりました。
(156.00付近の高値に到達して引けている状況)
メイントピックスである、
- 「RBA政策金利」
- 「BOE政策金利」
についてまとめます。
RBA政策金利
【まとめ】
- 結果:据え置き(435bp)
- インフレ警戒も「中立的スタンス」な印象
- 予想ほどタカ派的でない
- インフレ率が持続的に目標レンジに収まるにはまだ時間がかかる
- 上振れリスクを引き続き警戒
(ブルームバーグ)
豪中銀、インフレ警戒も「中立」バイアス-12年ぶり高水準に据え置き
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-07/-4-35-lvvwj2md?srnd=cojp-v2
据え置きに関してはマーケットの予想通りとなります。
インフレがまだ落ち切っていない状況なので、高い金利を維持しながらも様子を見るといった所でしょうか。
しかし、1-3月(第1四半期)のインフレ率のサプライズがありました。
過去の声明文にて『追加利上げの可能性も排除できない」という内容があり、マーケットの一部では「タカ派意見=利上げに対しての可能性を排除しない」的な内容があるかもしれないと事前予想されていました。
ただし今回は、【利上げ】に対する言及がなかったことで、一旦の利確売りが出たのではないかと想定しています。
しかし「インフレの上振れリスクに対しては引き続き警戒」とのことなので、政策委員会では利下げ時期がまだ遠いと判断している状況なので、【ハト派】姿勢ではありません。
BOE政策金利
【まとめ】
- 結果:据え置き(525bp)
- MPCは7対2で5.25%の据え置きを決定
- 2人が0.25%の利下げを主張
- 2人は利下げを支持の内、1人がラムズデン副総裁
- 数カ月内に利下げが必要になる公算が大きい
- 6月になる可能性を排除はしないが、既定路線でもない
(ブルームバーグ)
英中銀、利下げに近づく-総裁は市場予想より速いペースも示唆
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-05-09/SD7T8TDWRGG000
上記の結果で、英中銀が利下げに近づくような内容だったとされ、ポンド安となりました。
今年は米国大統領選が控えていることもあり、パウエル氏に「利下げをするように」と圧力が掛かっているように、英国も総選挙が始まるため、与野党からベイリー氏に「金利を下げる方向」の圧力がかかっている状態です。
(前回)BOEでは「8対1」で据え置きが決定しましたが、今回は「7対2」で据え置きが決定しました。
2人は利下げを支持している状態ですが、その1人がラムズデン副総裁だったとのことです。
副総裁が「利下げ」を主張しているという事に関して、相場に対してのインパクトが強かった印象です。
そしてベイリー氏の発言内容もハト派な印象でした。
数カ月以内に利下げが必要になる公算が大きいと話しており、それが「6月になる可能性を排除はしないが、既定路線でもない」と述べ、ハト的な発言を残しつつ慎重さも加えながら会見をしていました。
ただマーケット目線では、「BOEの利下げは6月以降から始まるかも」という解釈に切り替わっているように感じます。
まとめ
主要5カ国(日・米・欧・英・豪)の金融政策は、為替相場の方向性を知るうえで重要な指針となります。
各国の金融政策内容を軸に、引き続き重要指標・要人発言の確認をしていきます。
今週もよろしくお願いします。