
本記事では、2025年5月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
目次
2025年5月12日~5月16日
①(月)ドル・株高
- 米中貿易協議
- 1円のギャップをあけてスタート
- 米中が90日間の関税率大幅引き下げで合意
- 米国の対中関税は145%から30%に
- 中国の対米関税は125%から10%に
- 90日間の「停戦」期間
②(月)株高
- トランプ米大統領発言
- 習主席と話すつもりだ。恐らく週末になるだろう
- 中国は非金融障壁の全面撤廃に同意した
- 中国はフェンタニルの流通を阻止することに同意
③(火)円高
- 加藤財務相発言
- ベッセント米財務長官と為替協議を検討
- 為替動向について具体的なコメントは控える
- 日米財務相会談を実施することも検討
- 為替協議をする可能性ということで円高
④(火)ドル・株高
- 米CPI(消費者物価指数)
- CPI前月比:予想+0.3% 結果+0.2%(前回-0.1%)
- CPI前年比:予想+2.4% 結果+2.3%(前回+2.4%)
- CPI前月比・コア:予想+0.3% 結果+0.2%(前回+0.1%)
- CPI前年比・コア:予想+2.8% 結果+2.8%(前回+2.8%)
- 市場が思っていたほど、物価が上がっていない状況
⑤(火)株高
- サウジ「対米投資」の件
- 対米投資を1兆ドルに積み上げる意向
- 6000億ドル(88兆円)の投資を確約
- 米国1420億ドル(約21兆円)規模の武器売却などで合意
⑥(水)アジア通貨安
- 米・韓の「為替議論」報道
- 韓国:米国との為替協議が行われたことを確認
- 韓国が為替協議するということは日本でもありえる
- 韓国ウォンに関してはドルに対し一時2%上昇
- ドル円に関しては1.38円下落
⑦(水)株高
- カタール「対米投資」
- 総額2435億ドル(約35兆6600億円)超の取引を成立
- カタール航空によるボーイングの210機購入
- 金利上昇が目立ち株は上げ切らない状態
⑧(木)円高
- 為替協議の件
- 米国から水曜日に為替議論はないという報道
- マーケットはそれを信じていない
- 対円が大きく買われている状況
⑨(木)ドルが乱高下
- 米PPI(生産者物価指数)
- PPI前月比:予想0.3% 結果-0.5%(前回-0.4%→0.0%)
- PPI前年比:予想2.6% 結果2.4%(前回2.7%→3.4%)
- PPI前月比・コア:予想0.2% 結果-0.4%(前回-0.1%→0.4%)
- PPI前年比・コア:予想3.2%結果3.1%(前回3.3%→4.0%)
- 経済指標が全体的にマチマチ
⑩(金)ドル高
- 経済指標(ミシガン大)
- 予想53.0 結果50.8(前回52.2)
- 1年先インフレ期待:予想6.5% 結果7.3%(前回6.5%)
- 5年先インフレ期待:予想4.4% 結果4.6%(前回4.4%)
- 1年先インフレ期待が上昇しすぎている
⑪(金)まだ不明(株価下落か?)
- 米信用格付け最上位から引き下げ
- ムーディーズ
- 「Aaa」から「Aa1」に引き下げ
- これがどのように市場に反応するか?
(ドル円)週明けは148円後半まで上昇(米中貿易協議による)するも、米韓の「為替協議」報道などを経て週後半は145円台まで下落する流れとなりました。
ドル円の値幅約3.8円(380pips)となり下落の1週間でした。
今回のメイントピックスである、「米中貿易協議」「米・韓の「為替協議」」についてまとめていきます。
2025/5/12~週は、主要通貨は対ドルにて売られる1週間でした。
貿易・関税に関する報道や思惑に振らされる週となり、来週も警戒感が高まります。
(日米通商交渉の進捗、米韓の為替協議による思惑、欧米交渉に絡んだ続報など)
(米国時間の引け直前)
大手格付け会社ムーディーズ・レーティングズが、米国の信用格付けを最上位より1段階引き下げを発表。
週明けの影響に注目です。
米中貿易協議
米中貿易協議、「著しい進展」と両国代表が自賛-具体性は欠く
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-11/SW3TSET0AFB400?srnd=cojp-v2
両国の発言内容にて、米中貿易協議が前進しているとマーケットは捉え、ドル円・株価に関しては大きく上昇し先週月曜日からギャップ(窓空け)をあけてスタートします。
ベッセント氏は「米中両政府は協議の詳細を12日に公表」と共同声明を公表する予定となっており、グリア代表は「これほど早く合意に達することができたということは、両国の隔たりは思ったほど大きくなかったということだろう」と発言。
何副首相(中国側)もベッセント氏と同様に「建設的で確かな進展があった」と発言。
米中が貿易問題について協議する枠組みを設立することに合意したとして、今後も協議を継続する意向を示しています。
「世界最大の2大経済大国の持続的な対話と、意見の違いへの責任ある対応、winwinの協力関係の深化が世界経済に確信と勢いを取り戻す」と発言します。
そして迎えた協議内容は以下になります。
米中、双方の追加関税115%引き下げで合意 共同声明発表
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1278C0S5A510C2000000/
【90日間の「停戦」期間】
- 米中が90日間の関税率大幅引き下げで合意
- 米国の対中関税は145%から30%に
- 中国の対米関税は125%から10%に
トランプ氏が先週日曜日に80%の引き下げまでと言っていただけに、かなりのポジティブサプライズとなりました。
100%以上の関税引き下げはマーケットも予想できていなかったこともあり、市場は大きくリスクオンに傾いた結果となりました。
これにより、米国の「株価・通貨・金利」が大幅上昇することになり、市場は終日米国買いの流れとなりました。
米韓の「為替協議」
加藤財務相、米財務長官との為替協議を検討-来週G7会合で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-13/SW68B1T0G1KW00
まずは13日に加藤財務相が「ベッセント米財務長官と来週のG7会合の場で為替協議を検討」と発言をしました。
この報道が出て、円高方向に13日午前中から動く流れとなります。
現在貿易協議が進んでいない日本ですが、米国に対してのカードとして「為替レート」を使ってくるのか?という思惑が広がっていました。
そして14日に以下の報道が出ます。
米韓高官が為替政策を協議、ウォン急伸-円も連想買いで上昇
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-14/SW8U1VT1UM0W00
【韓国企画財政部の報道官】
- 米国との為替協議が行われたことを確認
「米韓高官が為替政策を協議」という報道が出たことにより、大きくドル安の動きとなり、韓国が為替協議するということは日本でもありえるのでは?という投資家心理にて、アジア通貨買いのドル売りとなりました。
韓国ウォンは、ドルに対して一時2%近くの上昇となります。
ドル円は、1.38円下落の145.600円付近まで下落することになりました。
(大きくドル円が下落した要因として)前日に加藤財務相から「為替協議」について話が出ていたこともあって、マーケットが意識したのではないかと思っています。
そしてNY時間に突入しますが、そこで以下の報道が入り、関係者報道ではあるがドルの買い戻しが入ります。
<米国はドル安を模索していない、各国との関税交渉で-関係者>
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-14/SW9FSGT0AFB400
貿易交渉は行っているが、通貨政策に関する約束を合意内容に盛り込もうとはしていないと報道されたことで、ドル円は急落したレート付近まで戻す流れとなりました。
週後半では、この情報はフェイクなのではないか?というマーケットの思惑が入り、ドル円やクロス円は大きく下落し続ける流れになりました。
今週は「為替協議」に振らされる週だったので、今後の日米貿易協議(為替をカードとして使うのか?)にも注目です。
2025年5月5日~5月9日
①(月)アジア通貨高
- 台湾ドルが10%急騰
- 為替に対しての議論があったから?
- アジア通貨高になって円もその流れになるか?
- ドル円は143円台へ
②(月)ドル高
- 経済指標
- ISM非製造業景況指数:予想50.2 結果51.6 (前回50.8)
- 瞬間的に上昇するが、抑え込まれる
③(火)ユーロ安
- ドイツの首相がメルツ氏
- 1回目の投票では過半数を得られず
- 2回目の投票で630議席中325票を獲得
- 支持を得られなかったことがユーロ安に繋がる
④(火)ドル安
- 米10年債入札結果
- 最高落札利回り:4.342%(WI:4.354%)
- 応札倍率:2.60倍(前回:2.67倍)
- 金利下落でドル円は142円台に突入
⑤(水)ドル高
- 中国と貿易で閣僚級協議へ
- 中国との会談がスイスで行われることが決定
- 米中貿易摩擦が後退したことでリスクオン
- ドル円は143円台に急騰
⑥(水)ドル安→ドル高
- FOMC&パウエル氏の発言
- 結果:据え置き(450bp)
- 声明文はややハト派でドルが売られる
- パウエル氏の発言はややタカ派で買い戻し
- 高関税が続けば失業率上昇とインフレ上昇のリスク
- 早期利下げには慎重
⑦(木)ポンド高
- BOE政策金利
- 結果:利下げ(425bp)
- 世界的な貿易戦争が英経済の重し
- 5人が25bp引き下げ支持
- 2人は50bp引き下げ
- 2人が「据え置き」を支持
- 2人据え置きがいてることに市場は反応
⑧(木)ドル・ポンド高
- 日英貿易協定合意
- 鉄鋼・アルミの25%関税を撤廃
- 自動車関税 27.5%→10%(上限10万台)
- 10%の相互関税は継続…
- ドル・株が大幅に上昇してリスクオン相場になる
⑨(金)株横ばい
- 米中の貿易協議待ち
- 貿易協議を週末に控え動かない展開
- 10日にスイスにて
- トランプ氏は中国製品に対する関税率を80%が妥当
- マグニフィセント・セブンの株価がテスラ以外は好調
⑩(金)ドル安
- インド・パキスタン情勢
- 地政学リスク
- 軍事衝突激化
- 全面戦争に近づく恐れ
- リスクオフ
当該週は、米国の経済指標やトランプ関税の動向によりリスクオン相場となりました。
ドル円の値幅約3.8円(380pips)となり、一時146円台まで回帰する流れとなりました。
では今回のメイントピックスである、「FOMC」「日英貿易協定合意」についてまとめていきます。
FOMC
FOMCが金利維持、調整急がずとパウエル議長-関税リスク警告
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-07/SVWKPWDWLU6900?srnd=cojp-v2
【FOMC】
- 結果:据え置き(450bp)
マーケットの予想通り、「据え置き」となりました。
反応は無風で通過となります。
声明はトランプ関税により不確実性が高まっている状況、そして「失業率上昇とインフレ上昇のリスク」というスタグフレーション懸念も出ていたことにより、若干利下げ前向きともとれる内容でややハト派な印象でした。
この時点でドル円は徐々に下落する流れとなりますが、パウエル氏の発言が入りドルの買い戻しが入ります。
パウエル議長発言
トランプ大統領の相互関税の件に触れ、「予想を大幅に上回る」との発言でした。
ただ、「2019年の時のように予防的な利下げができないので、利下げは急がない」と発言しておりました。
この高関税が続けば声明文でもある通り、「失業率上昇とインフレ上昇のリスク」があると指摘。
この上、経済鈍化する可能性も高いとしています。
ただし現時点で政策の対応は不要で、関税次第で臨機応変で対応していく流れと主張。
また景気に配慮した予防的措置として、2024年9~12月に計1.00%の利下げをしている点を強調しました。
こうした発言が「早期利下げに慎重」という印象も与えた内容となり、マーケットはややタカ派と捉えてドル円は上昇することになりました。
そしてトランプ大統領のことで質問がありましたが、「トランプ氏発言は我々の仕事に何ら影響しない」と発言しており、FRBの独立性を改めて主張して会見を終えました。
FedWatchは特にそこまで変わらない感じで推移しております。(年内3回)
日英貿易協定合意
トランプ氏、英国との貿易協定合意を発表-詳細は交渉継続
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-08/SVY6YWDWX2PS00
トランプ大統領が英国との貿易協定合意を発表しました。
追加関税の発表後、米国が貿易協定で合意するのは英国が初めてとなります。
合意内容は以下になります。
【英国→米国の輸出】
- 鉄鋼・アルミの25%関税を撤廃
- 自動車関税 27.5%→10%(上限10万台)
【米国→英国の輸出】
- 米国産牛肉などに対し、英国へのアクセスが改善
- 米国産エタノールに対する英国の関税撤廃
- 英国によるボーイング社製航空機の購入
- 税関手続きの簡素化
【維持される措置】
- 10%の相互関税は継続…
この発表を受け、ドル・株価が上昇するリスクオンの流れになりました。
英国に対しては10%の基準関税が維持されたままで合意となりましたが、これが今後の各国のモデルケースになるのか?という所です。
ただし英国は、米国からすると「貿易黒字国」になるので、合意形成も容易としてマーケットは捉えています。
ですので、「貿易赤字国」からするとモデルケースにはならないということですね。
今回、英国は自動車関税が譲歩され、米国側は「他国では同じ措置をとらない姿勢」を示していますので、赤字国の日本に関しては難しいかもしれません。
10日には米中の貿易交渉もありますので、引き続き注目です。
まとめ