
本記事では、2025年9月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
目次
2025年9月8日~9月12日
①(月)円安
- 石破首相辞任
- 高市氏の期待により円安
- 高市氏はバラマキ政策
- 以前は利上げ否定論者
②(月)ユーロ高
- フランスの信任投票にて、敗北
- バイル首相辞任
- 市場は織り込み済み
- 仏債券が上昇
③(火)円高
- 日銀の観測記事
- 石破首相の退陣表明後でも
- 年内利上げの可能性を排除しない
- 市場は「10月もありえる?」という流れ
④(火)ドル安→ドル高
- 雇用者数ベンチマーク改定
- 1年間の雇用者増は91万1000人下方修正
- 1カ月当たりでは7万6000人近い下向き改定
- マーケットは既に織り込み済みでの買い戻し
⑤(水)ドル安→ドル高
- 経済指標
- PPI前月比:予想+0.3% 結果-0.1%(前回+0.9%→+0.7%)
- PPI前年比:予想+3.3% 結果+2.6%(前回+3.3%)
- PPI前年比・コア:予想+0.3% 結果-0.1%(前回+0.9%→+0.7%)
- PPI前年比・コア:予想+3.5%結果+2.8%(前回+3.7%)
- CPIを見たいという所の買い戻し
⑥(木)円安
- 高市氏が自民総裁選に出馬する意向
- 報道が入り円安相場に
- 利上げ否定論者
- 利上げ観測後退
⑦(木)イーブン
- ECB政策金利
- 結果:据え置き(215bp)
- 2会合連続の据え置き
- ラ:ディスインフレの進行は終了
- 来年末まで利下げない予想
⑧(木)ドル高→ドル安
- 経済指標
- CPI前月比:予想+0.3% 結果+0.4%(前回+0.2%)
- CPI前年比:予想+2.9% 結果+2.9%(前回+2.7%)
- CPI前年比・コア:予想+0.3% 結果+0.3%(前回+0.3%)
- CPI前年比・コア:予想+3.1%結果+3.1%(前回+3.1%)
- 新規失業保険申請件数:予想23.5万件 結果26.3万件
- 労働市場が悪化(利下げ観測前進)
⑨(金)円安
- 共同通信の世論調査結果
- 高市早苗氏:28.0%でトップ
- 小泉進次郎氏:22.5%
- 林芳正氏:11.4%
- 「金融緩和寄り」「積極財政寄り」が要因
⑩(金)ドル安
- 経済指標
- ミシガン:予想58.1 結果55.4(前回58.2)
- 1年先期待インフレ:予想4.8% 結果4.8%(前回4.8%)
- 5年先期待インフレ:予想3.4% 結果3.9%(前回3.5%)
2025/9/8~は、全面円安となりました。
当該週の為替相場は、石破首相が辞任表明・次の候補者が高市氏となり「高市相場」となっていた印象です。
しかし米経済指標の要因でドル安が伝わると、ドル円の値幅は2.27円(227pips)となり、現在は147円中盤付近を推移しています。
では今回のメイントピックスである「高市相場」「米経済指標」についてまとめていきます。
高市相場
石破首相が辞任表明、日米関税交渉に区切りで決断-「後進に道」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-07/T27MKOGP493500
昨年10月の首相就任から1年足らずの退陣表明となりました。
自民総裁選「フルスペック型」22日告示 国会議員投票は10月4日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250909/k10014917341000.html
自民党の総裁選では、昨年の総裁選で上位につけた高市早苗氏、小泉進次郎氏、林芳正氏、小林鷹之氏による争いが軸となるとみられていて、高市氏の思惑が広がり日経平均株価は急上昇して、金曜日時点では最高値を更新して引けを迎えています。
自民党総裁戦ですが、9月22日告示の10月4日に「フルスペック型(国会議員票と全国の党員票の合計で争われる)」で行う見通しとなっていて、去年の総裁選挙もこの方法でしたが少し時間はかかりそうな印象。
高市氏が出馬へ 自民総裁選
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91280440S5A910C2MM8000/
そしてその中でも「高市氏」は前回石破氏と一騎打ちで負けましたが、かなり惜しかったので、次の首相候補として期待が大きい状況です。
木曜日に高市氏が自民総裁選に出馬する意向を岸田文雄前首相に伝達した時も、この影響で円売りが入り一時的に円安相場の動きとなります。
理由としては、過去に「今利上げをするのはアホや」というダイレクトな表現を使った印象があったからか、「利上げ否定論者」として見られているので「利上げ観測後退」の流れになります。
そして金曜日に「共同通信の世論調査結果」を出した際も、高市氏が1位だったことを受け、東京から欧州時間にかけて円売りが入ることになり、1週間通して「高市氏」の報道が出ると円安に動く為替相場だった印象です。
自民党総裁選、高市氏トップ28%・小泉氏22% 共同通信世論調査
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1291V0S5A910C2000000/
世論調査の結果は以下。
- 高市早苗氏:28.0%
- 小泉進次郎氏:22.5%
- 林芳正氏:11.4%
米経済指標
ジャクソンホール会議でのパウエル議長のハト派な姿勢、そして先月と金曜日の2度の雇用統計で利下げ再開への道がサポートされました。
これまでの優先順位は「物価>雇用」となり、物価高を抑制できていない状況を拠り所にして利下げを停止してきましたが、「物価<雇用」というシフトを迫られている状況です。
そして米CPI・PPIの発表があり、CPIは前月より上昇はしているものの、「利下げ」を妨げるほどではないという反応で、ドルは失速することになりました。
その要因は労働市場に関わる経済指標で、同時に発表された「失業保険申請件数」の数字がかなり増えていたことが要因とされています。
米失業保険申請件数、ほぼ4年ぶり高水準-レイオフの動き広がる
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-11/T2FC96GOYMTQ00
【米新規失業保険申請件数】
- 予想23.5万件 結果26.3万件(前回23.7万件→23.6万件)
上記の結果を受け、ドル円は大きく下落することになりました。
通常は20万件~24万件程度で推移する毎週木曜日に発表される統計ですが、今回は26万件以上となったことが要因です。(失業者が増えている)
ジャクソンホール会議以降、物価・雇用が同等のリスクになっていることがマーケットに織り込まれているので、物価は予想通り・労働市場は予想を遥かに上回る数字(ネガティブ)で大きなインパクトがあった状態。
この結果が「利下げ観測が前進」した要因で、25bpはほ確実視されていますが、50bp利下げもあるか?という期待がもしかしたらあったかもしれませんね。
ただこのままこの流れが続くと、スタグフレーション懸念が再び騒がれますので、「リスクオフ」の流れになる可能性があります。
2025年9月1日~9月5日
①(月)レンジ相場
- 米国祝日
- レイバーデイ
- 特に材料なしのレンジ相場
②(火)円安
- 氷見野副総裁&森山裕幹事長の辞意
- 氷:今まで通りの発言内容(利上げ路線)
- 氷:具体的な示唆がなかった(ハト派と捉えられる)
- 森山裕幹事長の辞意
- 日本の政局不安
③(火)ポンド安
- 英財政懸念
- 長期金利が上昇
- 英国トリプル安(債券安、株安、通貨安)
- きっかけで世界の金利が上昇
- フランスの財政状況も浮き彫りに
④(火)ゴールド高
- 金利上昇による世界リスクオフ
- 通貨の信用がなくなる
- ゴールドが最高値更新(3500ドル以上)
⑤(水)ユーロ・ポンド安
- 経済指標
- 仏非製造業PMI:予想49.7 結果49.8(前回49.7)
- 独非製造業PMI:予想50.1 結果49.3(前回50.1)
- 欧非製造業PMI:予想50.7 結果50.5(前回50.7)
- 英非製造業PMI:予想53.6 結果54.2(前回53.6)
⑥(水)ドル安
- 経済指標
- JOLTS求人:予想7378千件 結果7181千件
- 失業者1人に対しての求人数が1以下
- 上記は2010年以来で、失業率が下がる傾向
⑦(木)ドル安→ドル高
- 経済指標
- ADP:予想+6.5万人 結果+5.4万人(前回+10.4万人→+10.6万人)
- 新規失業保険申請件数:予想23.0万件 結果23.7万件(前回22.9万件)
- ISM非製造業景況指数:予想51.0 結果52.0(前回50.1)
- 雇用関係の指標は予想を下回る
- 景気関係の数値は上昇(スタグフレーションが改善か?)
⑧(金)ドル安
- 雇用統計
- 雇用者数:予想7.5万人 結果2.2万人(前回7.3万人→7.9万人)
- 失業率:予想4.3% 結果4.3%(前回4.2%)
- 平均時給(前月比):予想+0.2% 結果0.3%(前回+0.3%)
- 平均時給(前年比):予想+3.7% 結果3.7%(前回+3.9%)
- 148.206円から146.816円まで1.4円ほど下落
2025/9/1~は、大きな変動率はありませんでした。(やや日本円が主要通貨に対して売られた結果)
直近6週間はドル全面高・全面安となった週はなく、週間の騰落はマチマチとなり、為替市場では方向感に乏しい展開が続いています。
今週は、日本の政治情勢・ECB政策金利・米CPI/PPIに注目です。
当該週の為替相場は、世界的な金利上昇が影響し、瞬間的にリスクオフの動き=ドル買いが入ることになりましたが、雇用統計の結果が予想を下回る弱さで、往って来い相場の状況となりました。
ドル円の値幅は2.34円(234pips)となり、現在は147円中盤付近を推移しています。
では今回のメイントピックスである「世界的な金利上昇」「雇用統計」についてまとめていきます。
世界的な金利上昇
英国債が下げ拡大、30年債利回り1998年以来の高水準-ポンド急落
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-02/T1Y986GOYMTC00
火曜日の世界的な債券売り(金利上昇)にて大きく影響したのが、「英国(ポンド)」になります。
英国の財政懸念で長期金利が上昇する流れとなりました。
そして英国は、「トリプル安(債券安、株安、通貨安)」になっています。
英30年債利回りは「5.67%」と1998年以来の高水準となり、英国の厳しい財政見通しが同国債を圧迫し続け、「6%」を超えるだろうと指摘されています。
現在フランスの政局不安にて『国債売り=金利が大幅上昇』している状態で、欧州がやや危ない状況であることに変わりはありません。
直近1週間の英国とフランスの30年債利回りの動きになります。
フランスは政局不安で債券が売られていますが、実は財政状況もよくない状況です。
EUの財政規律(財政赤字の基準)として用いられる考え方は「GDP比の3%以内に抑える」ということです。
イタリアは以前から財政赤字が多い国として知られていましたが、ユーロ圏内で2番目に影響を与えるフランスも以下のように財政赤字が膨らんでいる状態です。
米国も財政赤字の問題などが取り上げられているので、火曜日は債券金利が引っ張られるように上昇し、このような背景から「格付け会社からの格下げ」が見込まれている状況で、世界的にリスクオフが広がったという流れになりました。
世界の国債格付けは、以下のサイトにてわかりやすくまとめてくれています。
https://lets-gold.net/sovereign_rating.php
雇用統計
【結果】
- 雇用者数:予想7.5万人 結果2.2万人(前回7.3万人→7.9万人)
- 失業率:予想4.3% 結果4.3%(前回4.2%)
- 平均時給(前月比):予想+0.2% 結果0.3%(前回+0.3%)
- 平均時給(前年比):予想+3.7% 結果3.7%(前回+3.9%)
労働局長解任から初めての雇用統計だったので注目されていましたが、今回の雇用統計の結果は全体的に弱い結果となりました。
今回の雇用者数は2.2万人で、先月の修正が7.3万人→7.9万人に上方修正されるも、先々月の修正が14.7万人→1.4万人→1.3万人と下方修正も入り、3ヶ月平均の雇用者数は2.9万人となりました。
そして失業率は4.3%に増えており、JOLTS求人数にて「失業者1人に対しての求人数が1以下になるのが、2010年以来のこと」で、このような状況では「失業率」が上がってくると言われていた通りの結果となりました。
ISM指数のコメントでも、トランプ関税を気にして採用を抑制している企業が多くありましたし、現在は「AIによる雇用代替」の指摘も増えています。
20-24歳の失業率が急上昇していて、高学歴の新卒の就職難も報じられています。
AIによる「若年・ホワイトカラー層」の“雇用破壊”、米政治の潮流を変える新たな鍵に
エンジニアや金融、コンサルなど比較的高収入だった職種でも業務の一部がAIで代替されるようになりました。
その結果、採用が鈍っていることを考えると、企業の業績は良いのに、雇用者数が落ち込んで失業率が上昇(AIによる影響)していることは頷ける内容とも言えます。
そして今回の上記の結果を受け、ドル売りに拍車がかかりました。
ドル円は148.206円から146.816円まで、1.4円ほど下落することになりました。
そして今回の雇用統計が悪かったことによって、「利下げ観測が前進」したことで、株価は上昇することになります。
(土曜日時点)FedWatchでは、「25bp利下げが89%」で「50bp利下げが11%」と偏ってきています。
年内利下げ予想はほぼ3回分になっていますね。
リスクバランスにて物価と雇用は同じ程度あるとして、今週のCPIも非常に注目されています。
結果次第では上記の数字に変化が出ますので、引き続き注目です。