
本記事では、2025年3月の為替市況について解説いたします。
テクニカル分析も重要ですが、FXは外貨と外貨の両替による取引で損益が発生します。
そのため週間レポートは、通貨の売買を促すきっかけとなるファンダメンタルズ(経済/金融の流れ)中心の見解となります。
各週の相場状況・重要トピックスについて解説します。
目次
2025年3月3日~3月7日
①(月)ドル安
- 経済指標
- ISM製造業景況指数:予想50.5結果50.3(前回50.9)
- Iやはり米国は経済悪化しつつあるのでは?
②(月)ドル安
- トランプ関税発言
- カナダ、メキシコ関税の合意には余地はない
- 円や中国元は通貨として弱い(円安是正)
- 通貨安の国に関税を課す
- 株も為替もリスクオフ
③(火)株・通貨安
- 報復関税
- カナダ・中国の報復関税
- メキシコは9日に発表
- 貿易摩擦の激化懸念
- リスクオフ
④(火)ユーロ高
- 要人発言&ウクライナ戦争&ドイツ債務ブレーキ改革
- フォンデアライエン欧州委員:欧州再軍備で8000億ユーロ近くを投入
- ゼレンスキー大統領:天然資源と安全保障の取引に調印の用意
- 終結の可能性が浮上
- メルツ独次期首相:1%を超える支出を免除する
- メルツ独次期首相:5000億ユーロの特別防衛基金を設立
⑤(火)ドル安
- ベッセント米財務長官
- 金利を引き下げることに注力している
- FRBが年内の利下げが3回になるのでは?」という報道
- FedWatchでは年内3回予想
⑥(火)ドル高・株高
- 関税発言(ラトニック米商務長官)
- カナダとメキシコ、4月2日に関税の変更があるだろう
- 再度、株高・円安相場復活になる可能性
⑦(水)ユーロ高
- ドイツ経済の復活期待
- ドイツ5000億ユーロのインフレ基金創設
- ドイツ連銀「債務ブレーキ」の改革を提案
- 欧州の総額8000億ユーロ規模の防衛計画を提案
- ウクライナ戦争の終結の可能性(トランプ大統領演説)
- ドイツ10年債利回り35年ぶりの上昇幅
⑧(水)ドル安
- 経済指標
- ADP雇用統計:予想+14.0万人 結果+7.7万人
- ISM非製造業景況指数:予想52.6 結果53.5(前回52.8)
- ADPで安値をつけに行く
- ISMに関しては強い数字で株高に反応
⑨(木)円高
- 春闘6%超え報道
- 2025年春闘の賃上げ要求が6%を超えた
- 日本の10年債利回りは1.5%
- 欧州時間にはドル円147円台に突入
⑩(木)ユーロ高
- ECB政策金利
- 結果:25bp利下げ(2.65%)
- 今後はデータ次第ではあるが利下げはストップか?
⑪(金)ドル高
- 関税発言
- USMCAの全製品に対する関税を延期
- 4月2日まで
- 若干買い戻しが入るが147円台
⑫(金)ドル安
- 経済指標
- 雇用者数:予想16.0万人 結果15.1万人(前回14.3万人→12.5万人)
- 失業率:予想4.0% 結果4.1%(前回4.0%)
- 平均時給・前月比:予想0.3% 結果0.3%(前回0.5%→0.4%)
- 平均時給・前年比:予想4.1% 結果4.0%(前回4.1%→3.9%)
⑬(金)ドル高
- 要人発言(パウエルFRB議長)
- 政策金利を当面、据え置くことが適切
- インフレには重要な上振れリスクがある
- 利下げ急ぐ必要なし
- インフレ率2%への道のりは起伏が続く
- 新たな政策のインフレ効果に関する不確実性が高まっている
当該週は材料がかなり多かったのですが、結果的に円高・欧州通貨高に流れる相場状況となりました。
米国の円安是正と日銀の利上げ観測が入り、長期金利の縮小が要因になります。
ドル円の値幅は約4.35円(435pips)となり、5カ月ぶり(2024年10月4日付近)146.95円に突入しました。
今週のメイントピックスである、
- 「円高要因」
- 「欧州の動き」
についてまとめます。
転換点になる可能性が高い1週間となりました。
円高要因
- トランプ大統領の円安是正発言
- ベッセント米財務長官の金利を引き下げ発言
- 貿易摩擦激化のリスクオフ
- 春闘の賃上げ要求が6%超え
円高要因についてまとめます。
その1:トランプ大統領の円安是正発言
対カナダ・メキシコ関税で交渉の「余地全くない」-トランプ氏
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-03/SSKDFZT1UM0W00
【トランプ米大統領】
- 円や中国元は通貨として弱い
- 通貨安の国に関税を課す
この円安牽制の影響で、一気に「円買い」が入ることになります。
通貨安の国に関税を課すと名指しした国に日本が入っている状況。
【日本市況】円上昇して一時148円台、トランプ氏通貨発言で-株下落
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSKKVET0G1KW00
その2:ベッセント米財務長官の金利を引き下げ発言
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSLP5ST0G1KW00
【ベッセント米財務長官】
- 金利を引き下げることに注力している
- 銀行規制緩和を実施する
現在、米経済がトランプ米大統領の関税引き上げで打撃を受けるとの懸念が背景にああり、「FRBが年内の利下げが3回になるのでは?」という報道も出てきていました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSLP2ET1UM0X00
そしてトランプ大統領も金利を下げたい要因として、半年以内には米国債の1/3が満期償還を迎えるからということもあります。
2025年に9.2兆ドルの米国債務が満期:市場への影響と投資家の懸念
1400兆円を返済するか?借り換えするか?になりますが、確実に借り換えが必要になるので、借り換え時の金利が大事になってきます。
あまりにも金利が高い場合、米国はデフォルトに陥る可能性もあり急速に金利を下げたいと考えているので、現在は「金利を下げる」話も浮上してきているということになります。
金曜日の引け間際にパウエルFRB議長は「利下げは当面据え置き」という発言を残していますが、マーケットの2025年利下げ予想は、年始時の1回予想から3回へと増えている状況です。
【2025/3/8午前時点】
その3:貿易摩擦激化のリスクオフ
トランプ関税発動で深まる成長懸念、金融市場は転換点に-報復連鎖で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSL20PT0AFB400
トランプ氏は、1週間の間に『関税を決行する・引っ込める』と毎日意見が真逆のことを述べており、各曜日で相場が振らされていました。
- 月曜日 – 関税を撤回
- 火曜日 – 関税を再導入
- 水曜日 – 関税を撤回
- 木曜日 – 関税を再導入
- 金曜日 – 関税を撤回
ただ、対象国の報復関税が決行されていることもあり、マーケットでは「貿易摩擦が激化するのではないか?」といった思惑でリスクオフに傾く瞬間が多かった印象です。
ドル安もそうですが、特にリスクオフの影響が大きく出る株価が下落することになりました。
その4:春闘の賃上げ要求が6%超え
連合の春闘要求32年ぶり6%超え、日銀の早期利上げ観測を後押し
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-06/SSJG3YT0AFB500
2025年春闘の賃上げ要求が6%を超えたと発表されました。
6%を上回ったのは実に32年ぶりということで、この影響にて日銀の「利上げ観測が高まった」ということになります。
この報道で日本の10年債利回りは1.5%を上回っている状態で、米長期金利は引き続き4.2%ということで、金利差が縮小したことが円高方向に流れた理由になります。
(金曜日時点)以下のような報道が出ているので、今月の日銀会合に関しては「据え置き」が維持される可能性も考えられます。
日銀は今月会合で政策維持の公算大、世界経済の不確実性増す-関係者
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-07/SSQC9BT1UM0W00?srnd=cojp-v2
現在は「日銀の早期利上げ観測」&「米国からの圧力」により、円高方向に流れている状況です。
欧州の動き
ユーロの買いも目立った1週間となりました。
- ドイツ5000億ユーロのインフレ基金創設
- ドイツ連銀「債務ブレーキ」の改革を提案
- 欧州の総額8000億ユーロ規模の防衛計画を提案
- ウクライナ戦争の終結の可能性
その1.2:ドイツ5000億ユーロのインフレ基金創設&ドイツ連銀「債務ブレーキ」の改革を提案(3/4の出来事)
ドイツが借り入れ制限緩和へ、財政の鎖を緩め欧州の防衛を変革
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSM2KVDWLU6800
3月に入りユーロドルが大きく上昇したきっかけが、この「1・2」の出来事になります。
【メルツ独次期首相】
- 国防費に対する債務ブレーキを改革し、1%を超える支出を免除する
- 5000億ユーロの特別防衛基金を設立する
防衛およびインフラ投資に数千億ユーロを費やすと発表しました。
そして、交通やエネルギー網、住宅などの優先分野に投資する5000億ユーロ(約80兆円)規模のインフラ基金を立ち上げることで主要政党が合意したとも明らかにしました。
ドイツは憲法にも記載されている通り、財政赤字には非常に厳しい国として知られています。
そしてドイツは憲法で赤字額はGDPの0.35%以内におさえる憲法規定があります(債務ブレーキ)。
この債務ブレーキを解除するという改革をして、経済を活性化させることができるかどうかに期待が寄せられていましたが、それが現実の形になったことによってユーロが大きく買われたという流れになります。
そもそも欧州経済を大きく担っているのはドイツ経済とも言われているぐらいドイツ経済は重要なので、今回の憲法改革はかなり大きい出来事で、早期に達成したことがサプライズとマーケットが捉えています。
3:欧州の総額8000億ユーロ規模の防衛計画を提案(3/4の出来事)
EU、1500億ユーロの融資を提案へ-全欧州的な防衛強化に向け
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-04/SSLBTDDWLU6800
【フォンデアライエン欧州委員長】
- 欧州再軍備で8000億ユーロ近くを投入する可能性
- 全欧州的な防衛で1500億ユーロの融資を提案
欧州の防衛力強化に向けた総額8000億ユーロ規模(日本円にして125兆円)の防衛計画を提案。
1500億ユーロを共同で借り入れ、EU各国政府に防衛資金として貸し付けることをなど盛り込みました。
この発表を受け、欧州債は上げを縮め金利が上昇する流れとなり、ユーロ買いが入る流れとなります。
4、ウクライナ戦争の終結の可能性(3/5の出来事)
トランプ大統領とゼレンスキー大統領がホワイトハウスでの会談で口論になりましたが、その後、欧州でウクライナに対する安全保障を提供する「有志国連合」が立ち上げられました。
今回のタイミングで、上記の「1、2、3の出来事(防衛費に多額の金額が投入されたこと)」があったことは、この問題の影響も大きいです。
トランプ氏は元々、「欧州に対して安全保障は任せる」としてきました。
そんな中、ゼレンスキー大統領が支援金を一番拠出している米国を怒らせたことで支援金を一時停止する流れとなり、それを止められるとウクライナはロシアに投降するしか手段がなくなります。
そこで欧州側も「これだけ防衛費なども上げて欧州も頑張るから、米国も考え直してほしい」といった所でしょうか。
そして大統領演説にて「ウクライナの鉱物資源(レアアース)合意に署名する用意がある」との内容で、戦争が終結する可能性が再度浮上してきた流れになります。
金曜日にはロシア、停戦受け入れ用意を示唆という報道が入りました。
トランプ大統領、ロシア銀行への新たな制裁検討-ウクライナ戦争巡り
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-03-07/SSRCRDDWRGG000
戦争が終結する流れになると、欧州通貨は買われることになりますので、その期待もありユーロが買われている現状です。
2025/3/3~の週は、全面ドル安・円買い、EUR買いが目立つ1週間となりました。